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小譚顧耽 : Sep. 2024


先日。用事で業界の大先輩のお店へ行ってきた。

そこで様々に家具の修復や仕上げについてお話しをしていただいて、なんだかんだ楽しい時間を過ごしたのであるが、その中でもご自身でオイル塗装を施した家具を指して「これが俺の仕上げ。これが俺の艶」と示してくださったことがとても印象に残った。


どういうことかというと、オイル塗装とひとまとめに言っても下地の調整具合からオイルを塗り重ねる回数、乾燥させる時間の長さ、拭き取りの程度によって様々に差が生まれる。見た目には艶の強弱然り、さらに色の深みなどにも影響するであろうし、目には見えずとも耐久性などにも多かれ少なかれ差が生まれるかもしれない。

艶があった方が良いか/ない方が良いかは好みでしかないが、きっと先輩の伝えたかったところでは家具が纏う「艶」はお店ごと特有の個性であり、先輩はその「艶(個性)」にプライドを持っている。そしてまた先輩のお店のお客様たちも皆その「艶」を好んでいて、その「艶」を通じてお店とお客様との信頼が結ばれている。

意訳のし過ぎかもしれないが、何となく私にはそんな風に聞き取ることが出来た。

果たして私にも「俺の艶」なるものがあるだろうか?



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そんなことを考え始めたこの9月。幸運なことに他のお店の家具仕上げを観察する機会に何度か恵まれた。

お店によって家具の艶や質感は全然違う。やはり私の仕上げた家具とはどれも異なるし、しかしそれぞれがそれぞれの魅力をもっている。お店ごとの「仕上げ」の違いに注目して家具屋巡りをするのもなかなか面白い気がします◎


そしてつい先日の作業の日。

いつもの手順で家具の再塗装に取り掛かった。

古い塗装を洗い流して、いつもの通りに研磨して、普段通りの間隔・回数でオイルを染み込ませていく。

指先で肌理を確認しながら、材色の変化に注意を払いつつも、作業の間には特別に考えることはなく手順は常に身体が覚えている。

そうしてオイルを吸った材を眺めて「あぁこれこれ」って、そうか。

結局私が仕上げた家具、その家具が纏う艶こそ私の一番好きな加減ではないか。

慢心するつもりはないが、自分の仕事にきちんと誇りと自信をもって伝えていかないとな、って改めて考えることが出来た。自分を知るために外の世界にきちんと目を向けること、とてもとても大切です。



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夏長かった。この深い緑とも暫しのお別れ。



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