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【Column2】家具の仕上げ / オイルフィニッシュについて。その2

前回のコラムではオイルフィニッシュとはどのような仕上げ方法であるか

本当に簡単にその原理や目的、メカニズムについてお話させていただきました。


それを踏まえて今回はオイル仕上げ「塗料」について。

私たちが使用している塗料の紹介を中心にお話をしていきます。



▶工業製品としてのオイル塗料


オイル仕上げとは基本的には自然素材である植物油(乾性油)を使用して、乾燥・硬化という自然の現象を活用した木材塗装方法であることは前回お伝えしました。実際、食品用の亜麻仁油(乾性油)を塗って24時間自然乾燥させて木材内部で油を脂へと硬化させておけば原理としては大丈夫な感もあります。


がしかし、近代化・工業化の流れの中でオイル仕上げにも作業の合理化、また機能性の付与などが求められ、ピュアな油ではなく工業製品としての「塗料」として発展をしてきました。



▶塗料の紹介


オイル塗料と言ってもメーカーによって種類も機能も様々ありますが、私たちが実際に使用しているオイル仕上げ塗料は今現在は全部で3種類。


一つは英国製のワトコオイル。もう一つは独製のリボスオイル。あともう一つは後述します。


ワトコオイルもリボスオイルも、それぞれ亜麻仁油(乾性油)を主成分としながら合成樹脂を加えて耐性を強化し、さらに溶剤や乾燥促進剤を添加させることで作業性や機能性を高めています。

私も私なりの目的に応じてこの二つのオイル塗料を使い分けたりしています。それぞれ簡単に紹介します。



【ワトコオイル】


英国製ですが、ダニッシュオイルと冠されるほどデンマーク家具には多く利用されてきたかなりスタンダードなオイルです。

粘度は低くさらっとしているため浸透性が良く、伸びも良いため作業性も良い。

ただそのため樹脂分は低くほとんど皮膜を作らない。しかし何度も何度も塗り重ねていくことで少しずつ確かに皮膜を形成していく。


カラーオイルも選べるが私はナチュラルしか使ったことがない。

亜麻仁油を使用したオイル塗料を施工後、木材は時間と共に酸化による黄変を起こすため濃色の材は段々とその美しい深みを増していく。一方、白木材に施工する際、黄変してしまうため白木の雰囲気を残す仕上げには適さない。


またワトコオイルはガソリンのようなやや強めの刺激臭がある。この点できっと好みが分かれます。塗装後数日すれば刺激臭は消えます。作業の際には要換気。



【リボスオイル】


ドイツ製。ドイツの高い環境基準をクリアした自然健康塗料と謳われる。もちろん食品用ではないため飲んだらダメだけど低温で加工され油に含まれているビタミンなど栄養素をなるべく壊さないように精製されている。施工した家具を小さな子供が舐めてしまっても一応安心安全。人体に影響のあるアレルギー物質を含まない。原料となる亜麻仁油も契約農家とだけ取引し、その品質へのこだわりに信頼感は絶大です。


ただ価格がちょっと高い。さらに粘度も高い。ワトコオイルと比べてしまうと施工時の伸びも若干劣る。しかしその分何と言っても樹脂分が高い。私は艶を残したい時と着色剤の色止め/上塗りとしてリボスオイルを選択することも多いです。


リボスオイルも亜麻仁油を主剤とするため施工した家具は時間と共に黄変を起こすが、個人的な体感ではワトコオイルよりも白木材に施工した際の黄変の程度は若干低いような気がしている。気のせいかもしれません。

そのため私はビーチ材やアッシュ材などの塗装で使用することも多い。と言っても黄変はしますので白木の雰囲気を残したい場合にはお気をつけください。


リボス社のオイル、と言っても浸透性の高いオイルあり、浸透性は低いが表面で皮膜を作るオイルあり、亜麻仁油と蜜蝋を混ぜたメンテナンス向けのオイルあり、と種類もいろいろあるため目的に応じた施工が可能。

刺激臭はないが、特有のちょっと甘ったるい匂いがある。塗布後数日すれば匂いは消える。



【オイル仕上げ風ウレタン塗装】


そして後述するとした私が使用しているもう一つのオイル仕上げ塗料。

こちらは天然植物油とウレタン硬化剤を合わせた塗料となります。


メーカーの記載には天然植物油としか表記はないのですが恐らくはひまし油などの不乾性油を木材への導入剤として使用し反応型のウレタン硬化剤を木材深くへ運んでから(浸透)木材表面ではなく木材内部でウレタンを樹脂化させて定着させる(乾燥→硬化)仕組みです。


乾性油を浸透→乾燥→硬化させるオイル塗装と比べてもこの仕組みや順序はほとんど同じ。実際メーカーのサイトを見ても「オイルフィニッシュ塗料」と称しているほど。


しかし「油を硬化させるオイル塗装」と比較をするのであれば「ウレタンを硬化させる」のはウレタン塗装と分類した方が良いのではないか。と、まぁ呼称はどっちでも良いのかもしれませんが、それでもその性質の違いをきちんとお伝えするためにも私は「オイル仕上風のウレタン樹脂塗装」としていつもご紹介をしています。


皮膜は作らずともウレタン塗装だけあって、こちらの塗料はメーカーや販売代理店の方でも「浸透型オイル塗料の中では最強の耐水性、耐熱性、耐薬品性、耐汚染性を誇る」と謳う。お店でも特に日常汚れやダメージを受けやすいテーブル天板の塗装に採用をしています。実際私が家で使用しているテーブル天板の塗装もこちらの塗装仕上げ。

水や食べ物をこぼすし熱いお茶の入ったコップとかも直で置いてしまうし小さい子供がいるのでウェットティッシュなどで拭くことも毎日あるのですが、今のところ気になるほどのダメージはほぼありません。(今の塗装で5~6年使用してます)



硬化の仕組みはオイル塗装の酸化重合型の硬化ではなくウレタン反応型の硬化のため、塗料施工後、木材に酸化による色やけ(黄変)は起こりにくいと考えられる。もちろん浸透による材の濡れ色は表現されるが、黄変が起こりにくいことで濃色の材だけでなく白木材にも使用しやすいのではないか。

むしろ酸化による色やけが起こりにくいため、特にチーク材などの深い色を再現するには少し物足りないのかもしれない。この辺りの判断は結構難しいです。


希釈剤にシンナーを使用しているため刺激臭はあるが、こちらも数日で臭いは消える。

木の質感を損ねず、調湿性能も妨げず、なおかつ高い耐久性を誇るというところでは本当にお勧め出来る仕上げです。



▶まとめ


少し長くなりましたので今回はここまで。


オイルフィニッシュは自然由来の自然塗装というイメージですが

塗料としては「工業製品」のため、製品によって特長がそれぞれ異なることなど、なんとなくイメージしていただけたでしょうか。

私も目的や効果などを検証しながらその都度最適な仕上がりとなることを目指しています。




それでは次回は、私たちがオイルフィニッシュを選ぶその動機についてお話ししていきます。


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