『statement』
- わたしたちが目指すこと、大切にしていくこと -
ヴィンテージの価値に、傷の有り/無しとはどれほど影響をする事象なのでしょうか。
家具のレストアに向かう際に、これまでにもずっと考えてきました。
それでも頭ではメンテナンスを頑張った結果ほとんど傷のないコンディションに仕上がったという達成感や、お客様へご案内をする時にも傷があるよりも少ない方が受け入れてくれるだろうというこれまでの経験なのかはたまた思い込みなのか分からない期待が知らぬ間に芽生えていて、結果「傷があるよりも、傷は無い方がベター」なヴィンテージ家具屋を選択していたように思います。
と書いておいて、この話題に明確な答えなんてありません。
仮にそんな答えのようなものがあったとしても、その答え通りに、思い通りになることなんてそれこそ稀なことでしょう。
とにかく、私たちリペアをする側の人間として目指すことは「次の使い手が気持ちよく安心してその家具を使えるようにコンディションを整えること」であり、さらには「永続的な / 繰り返しのメンテナンスが可能となるように丁寧な仕事を心掛けること」であると考えています。
そしてまた私たち販売をする側の人間として目指すことは「その製品の魅力や価値を次の使い手となる方と共有していく」ことであり、そのためにも製品を介した過去や未来について想いを巡らせることや、自身の経験として語れるように一つ一つの製品に直に触れることや関わることといった行為が大切になってくるであろうと考えています。
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ヴィンテージの価値に、傷の有り/無しとはどれほど影響をする事象なのでしょうか。
それを決めるのは他でもない、その価値と向き合う私たち一人一人なのだと思います。
リペアの果てに傷跡が消えるか/残るかはただの結果であって、例え傷跡が残ったとしても歴史の一部 /製品の個性として、まず私自身がしっかりと向き合い尊重していきたい。そして一つ一つの軌跡こそを最大の魅力と考え伝えていく。そんなヴィンテージ家具屋を目指していきます。
Condition
背板ががっつりとえぐれていました。傷もたくさん残っています。
そしてそれ故の得体のしれない存在感に引き込まれ、様々なことを考え、気づかされたように思います。
塗装面も剥離や洗浄、研磨はせずにリフレッシュメンテナンスという「表面の汚れだけ落として古い塗装を活かす」仕上げを採用しました。
何でもかんでも新しくすれば良いということはなく、かと言って古いことであったりオリジナルであることに絶対的なプライオリティを感じているわけでもない。
変える必要があったら変えれば良い。
残せるのならば残せる努力をしてみたい。
無理に自然体で在り続ける必要はない。
その都度、最善と最良を考えていく。
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『statement』
店主 / 本間慎祐
2023年5月 / お店をはじめてから5年が経った今日この頃